新入社員研修が各地で行われるシーズンです。今年は企業が軒並み採用枠を増やしたこともあり、会場が足りなくなるなど、数年前とは大分様相が変わってきました。人気企業の新入社員に求めるスキルの調査結果では、協調性が最も高かったそうです。従前は行動力やバイタリティが上位でしたがこれらのスキルは順位を下げています。このことは企業の業績回復とともに、求める人材が閉塞感を打破する人材から現状維持型の人材にシフトしてきたことを意味します。今回も人事担当者から、彼らに社会人としての心構えを厳しく植えつけてほしいと注文する反面、会社を辞めないように楽しさや仲間意識のようなものも育んでほしいという注文がありました。それだけ大手企業でも採用が困難な時代が来たのでしょう。しかし数百人単位で採用する大手企業ではどんなに厳選して採用してもやはり不適応な人も出てきます。私は二週間で200人近い新入社員を見ることになりましたが、印象に残るのは今回の受講態度のまずさで入社早々に解雇の危機(本人は自覚してない)に直面している人です。こういう人たちはどういうところがだめなのでしょうか。
新入社員は基本的に能力に魅力を感じて採用されることはありません。基準は可能性とバイタリティ、対人交流スキルあたりではないかと思います。これが劣っている新入社員はたとえ潜在的な能力を持っていたとしても、人的な要素によって配属先で不利な状況に立たされ、最悪の場合、会社を去っていくことになります。対人交流が苦手な人は、もともと人と話すのが苦手というタイプもいますが、往々にして本人の資質ではなく環境に左右されています。彼らは基本的に集団の中では非難の対象になることが多いのです。無論彼ら自身にも問題はあるのでしょうが、いつも非難されたり蔑まれたりする環境では、その他大勢の人への猜疑心と嫉妬のようなものを心中に抱くでしょう。また、自己防衛的な本能からどうしても目つきが悪くなったり、髪型や服装、言動が攻撃的のものになっていくわけです。そして何よりも自己表出をしなくなります。
私の知る限りこのタイプは、ある程度分別のつくような年になっても、基本的な資質は変わらないのですが、表面的には穏やかに接するようになります。しかし代わりに卑屈になり、ますます自己表出をやめ、気の合う人以外を避けるようになります。普通の人と同じ環境にいれば絶対に自分が低く見られるというスキーマがあるのでしょう。学生の頃は同じような因子を持つようなタイプで群れることができますが、(会社ではこの群れは生産性をあげない不満集団となり、管理職としてはいずれ解体しなくてはならなくなります。)社会人になるといやでも多くの人と接しなくてはいけません。
対人交流、中でも素直な自己表出ができない人は、本人が自覚しているか否かに関わらず社会人として最初の壁にぶつかっているわけです。この壁を乗り越える方法は二つあります。一つ目は、素直な自己表出をすることができる人を真似ることです。本人にとっては大変難しいことですが、物理的には非常に簡単です。要するによい子の真似をするだけです。まず見た目の印象をよくするために、制服をきちんと着る、背筋をよくする、できれば私服も暗めの色から明るめに色に変える、語尾をはっきりと発言する等です。これができないのは、彼らの現在の後ろ向きかつ反発的な研修や仕事への取組みスタイルが一種の自己防御のための砦となっているからです。しかし、少し俯瞰してものを見れば、自己防衛の砦は自分を守るどころか、却って周囲の人の反感という形で跳ね返って不利な状況を作っているのです。孤立無援となった軍隊の篭城作戦のように、長引けば物資も不足し、兵は疲弊し、業を煮やした敵の軍隊から総攻撃を受ける危険性も高まる状況に自らを追い込んでいるようなものです。自分にとって何ら利益をもたらさない砦を壊すという意識変革によって対人交流スキルは急激に上昇するはずです。
もう一つは、自己の欠点を意識した上で、結果を早く出すことです。対人交流スキルの劣る人は、普通に作業をこなしているだけではどうしても他の人より評価が低くなります。同じ仕事量なら印象のいい人のほうが得をするからです。ならば、できる仕事量を増やせばいいのです。資格や技能を早く取得し、実務で同期に一目置かれるようにするのです。仕事の習熟度を比較するのは自分より高いレベルの人のみとし、同期を見てはいけません。この手段をとる人のほうが多いのかもしれません。また、理に適っているのでしょう。彼らは普通の人よりも離職率は高く、中途採用で別の組織に行くこともあると思いますが、中途採用はプロパーの社員に比べ早く結果を出さなくてはいけないからです。
この二つの方法は、択一的なものではなく、同時並行で行われることも多いです。自分は他の人より懸命に仕事をやっている、成果も並よりは上げている、能力的には勝りこそすれ決して劣ってはいないはずなのに、なぜいつも十分に評価されない、いったい自分と評価されやすい人とは何が違うのだろう、なぜかれらは上司や取引先にかわいがられるのだろう、というふうに成果を上げつつ自問自答したときにふと気がついていくのです。違いは対人交流の高さだと、そして不利な状況に追い込んでいたのは自分自身だったと、この悟りを得たとき、彼らは社会人として一段上にいくことになるでしょう。そしてこの悟りに行き着くまでの期間は短ければ短いほどいい。今日にでも気がついてもらいたいものです。
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