「部下にハッパをかけているのになかなか向上心を持って仕事に取組んでくれない」とリーダーはよく嘆きます。部下が向上心をもたないのはなぜでしょうか。向上心を持てない部下のなかには、世間体が悪いため、あるいは他にすることがないから働くというような人もいます。このような部下にとって昇給やポストはモチベーションにならず、叱咤激励は当人からすれば迷惑以外のなにものでもありません。
【向上心を持たなければ失敗も挫折もしない自己防衛本能】
なぜこのような人が育ったのでしょうか。一つの要因は目標設定が出来ないことが考えられます。向上心と目標は一体であり目標のない人は向上心が育つはずはありません。以前、ある受講者に目標を設定するように課題を出したことがありました。しかし、受講者から帰ってきた答えは時間を大量にかけたにもかかわらず、目標とはいえない日常業務の延長が設定されていました。私はさらにこの受講者と面談し、話を続けていくうちに一つの特徴を見つけました。それは自分の能力に簡単に限界をつけて、それ以上出来るように努力することはしないことです。根底にあるものはプライドの高さの裏返しと考えられます。表面的には競争を嫌い、悔しいという感情をもたないように見えますが、これは競争そのものを最初からしなければ負けることはないという自己防衛本能の現われです。最初から向上心を持たなければ失敗や挫折を経験することなく、安穏と生きていけるため自己の殻からでようとしないのです。
【ヤドカリを育てるように指導する】
このような人に対してはどのような指導がができるでしょうか。そもそも向上心というものは内面から湧き出すものであり、外部の人間が左右できる性質のものではありません。上述の通り、強い自己防衛本能をもつ彼らは、外部の人間が自分の殻を破ろうとするときは、激しい抵抗か逃避をします。この結果、モチベーションのさらなる低下を招くか場合によっては離職をします。もともと世間体や他にすることがないからという理由で働いている彼らは逃避という行動は非常に速く、思い立ったらその場で退社することもあります。ここまで極端な例にならなかったとしても、モチベーションが下がった場合は、この状態が慢性化することになります。
では外部の人は何も出来ないのでしょうか。彼らが向上心を持たない理由は失敗や挫折を避けたいという無意識の逃避行動によるものであり、プライドの高さの裏返しです。だとすればこのプライドを満たすことが必要になります。具体的には小さな成功体験を多く積ませることです。その際に設定する目標は少しの努力で達成できるものが望ましいです。そして向上心を持って目標を達成する習慣が身につくまでは、なるべく失敗や挫折をさせないことです。自己防衛本能が強い彼らは一回でも挫折や失敗があればすぐに元の自分の殻の戻ろうとするからです。成功体験の積み重ねは、無意識のうちに向上心を持たせます。成長するにつれて小さな殻から大きな殻へ移動するヤドカリを成長させるように、自分の能力よりわずかに大きい殻を用意してあげて、自分から殻を取り替えるように仕向けることがリーダーには求められます。
|