頑張れ!!浜松地域のモノづくり
浜松地域を中心とした静岡県西部の製造業の現状と課題

【はじめに】

 浜松市を中心とした静岡県西部地域は、日本でも有数の工業地帯である。「繊維」「オートバイ」「楽器」という三大産業を中心として大きく発展してきた。「繊維」をつくるための織機技術が先駆けとなり製造業の基盤がつくられ、その後、「スズキ」「ヤマハ発動機」「ホンダ」を中心とした「オートバイ」、「ヤマハ」「河合楽器製作所」を中心とした「楽器」が育っていった。楽器やオートバイは、日本のみならず世界的なシェアも高く、世界に誇れる「モノづくり地域」であるはずだった。

 しかし、バブルの崩壊、長引く景気の低迷、産業のグローバル化など様々な要因が重なり、今、大きな分岐点に立たされているといえる。今回、浜松地域を中心とした静岡県西部の製造業の特に中小から小規模の会社に絞り、直面している課題となすべきことについて考えてみた。

【地域の特徴と課題】

 当地域は、前述したとおり、「スズキ」「ヤマハ発動機」「ヤマハ」「河合楽器製作所」など大企業が集積している数少ない地域の1つといえる。そして、これら大企業を中心として、中小・小規模企業が数多く存在する。いわゆる地域全体が「ピラミッド構造」になっているのだ。

 このピラミッド構造が、これまでの地域の製造業発展を支えてきた。親企業の戦略のもと系列をなし、加工技術を武器に中小、小規模企業は成長してきた。また、親企業の期待に応えるべく、休日を返上し日夜問わず機械を動かした。技術と納期には絶対の自信を持ち、「モノづくり」を支えてきたのだ。

 しかし、モノがあふれ、バブルが崩壊する中でピラミッド構造が崩れはじめた。その要因の1つに、産業のグローバル化が挙げられる。今までの競争相手は、同じ地域にいる系列内の会社が主だった。それが、世界全体が相手となった。そこには価格破壊からくるコストダウンを無視できない。人件費が安い中国などの会社が脅威となった。親会社頼りで成り立っていた多くの中小、小規模企業は大転換を強いられたのだ。

 ピラミッド構造が崩れ、系列が崩れ、価格が崩れていく。このような状況での当地域の中小・小規模企業が抱える課題を考えてみる。

課題1 開発力がない

 加工を中心とした技術力は持っている。しかし、設計や開発となると胸をはる企業はほんの一握りではないか。そんなものは必要なかった。親会社が開発し設計した中で、「こういうモノをつくれないか」という加工技術の要望に応えてきた。しかし、系列が崩れた昨今、よほど特殊な加工技術を持っていない限り生き残りは厳しい。

課題2 営業力がない

 今まで顧客は、その大半が系列の親会社であった企業が多い。そのため、親会社への営業だけで問題なかった。しかし、ピラミッドは崩れた。系列は崩れた。他社にも入り込んでいける営業力は必要だ。

課題3 先を見越せず目先に捉われてしまう

 親会社の期待に応えるべく、「納期は絶対」であった。"今週末まで""明日まで""今日中に"といった環境が続き、「今日を乗りきる」ことに精一杯となり、その結果、納期ばかりでなく会社全体が目先に捉われてしまう思考となってしまった。3ヶ月先、半年先を見て、人が会社が動けない。

課題4 外部資源の活用ができない

 目先の仕事に捉われてしまうことで周りが見られなくなる。同業他社、異業種他社、行政、大学などとのタイアップ、あるいは支援など外部資源を活用できない、また、活用する術がわからない。

課題5 経営感覚の乏しさ

 多くの中小・小規模企業にとって、親会社が本社的な存在といえ、各々の会社は残念ながら「外部工場」にすぎなかった。方向性や戦略などはお任せで、「どこまでもついていきます。死ぬときは一緒です。」と考えていた。しかし、死ぬときは一緒ではなかった。別々に生き残っていく道を見つけていかなくてはならなくなった。ただし、元来が技術者の人が起業していることの多い当地域の中小・小規模企業が、これまで方向性や戦略など必要とされなかったのだから、経営感覚が乏しいのは仕方がないことかもしれない。しかし、これがないと生き残っていけない。

 こういったことで、現在の当地域での中小・小規模企業の社長さんは悩んでいると考えられる。

【今、何が必要か】

 それでは、今後、生き残っていくために何が必要なのか。「言うは易く、行うは難し」ではあると思うが、あえて列挙してみる。キーワードは「自立」だ。これは、何も企業だけに言えるのではなく、「三位一体改革」などで揺れる自治体にも、そして個々人にもいえることである。自立があってはじめて助け合いや支援が生まれる。以下は、当地域の中小・小規模の製造業が「自立」するために必要と思われることを挙げている。

@現所有の強みを生かしていく

 それぞれの企業が持つ「強み」をしっかりと把握する必要がある。そして、その強みを生かしていく、伸ばしていくことが必要である。今回対象の企業の場合は、それが「技術」というところが多いのではないか。そうであれば、「技術の継承」は非常に大事になっていく。1つの方法としては作業の標準化・マニュアル化である。しかし、標準化・マニュアル化には限界がある。それが特殊な技術になるほど、である。やはり、重要なことは、時間をかけて後継者を育てていくことであろう。これは早急に手を打つべきことといえる。

A営業力の強化

 前述したように、ピラミッド構造がゆえに営業という視点が非常に弱い企業が多い。どんなに優秀な製品や技術を持っていても、それを買ってもらえなければ会社は成り立たない。そのための手段として、@トップ営業強化Aマーケティング技術の向上B展示会などへの積極的参加などが挙げられる。@は、とかく中小・小規模企業の社長は現場作業に没頭してしまいがちである。特に、技術者から起業した人が多い当地域では、その傾向は顕著だ。しかし、トップが外に出ていかなければ誰も営業などしない。Aは、「どこに売るか」など市場を研究し、ポイントを絞り集中して営業をかけていくことが必要なことからも取り入れていくべきことといえる。グローバル化は、世界から来るだけでなく、世界へと飛び出していくチャンスでもある。Bは、自社の製品・技術を知ってもらうための足がかりとなるのではないか。他社の動向や業界の流れなども知ることができる。特に、関東や関西などでの展示会への参加が有効だ。

Bネットワーク拡大

 当地域の中小・小規模企業は、系列が強かったからか横のつながりがあまりないということを耳にする。昨今は、統廃合や競合他社間での業務提携、自治体にしても市町村合併など、個々では難しいものも複数が集まることで打開策が見つかることもある。自社の技術と他社の技術が組み合わされることで、新たな技術が生まれてくる可能性もある。同業種、異業種に限らず、また、大学や研究所なども1つの選択肢として、まずはコミュニケーションの場に参加するなどネットワークを拡げていくことは必要といえる。

C外部資源を生かそう

 「Bネットワークの拡大」も1つであるし、社長さんの相談相手としてカウンセラーやコンサルタントなどもその1つといえる。また、インターネットなどからの情報も貴重な外部資源だ。情報は、その選択を間違えると大きな痛手になり得るが、慎重に扱うことでそれは大きな財産にもなる。これら以外では、国や県、市町村などが実施している支援事業なども有効に活用されたい。

D社内体制の構築

 これから生き残っていくための社内体制を構築していかなくてはならない。特に重要ことの1つが、「社長の社長業への専念」だ。今まで親会社に頼っていた、会社としての方向性や戦略・計画などを考え、社長の思いを明確にし、会社の強み・弱みを把握していく。そして、内部にはリーダーシップを発揮し、外部にはトップ営業をかける。これらが、正に「自立」へとつながっていくと考える。

 ここまで厳しいことばかりを列挙してきたが、このような課題や必要なことは、全ての企業に該当するものではない。また、既に乗り越えている企業もある。大事なことは、現在の社会の動きを把握し、自社の強み・弱みを知っていくことだ。そして、社長のリーダーシップのもと、一丸となって進んでいくことである。浜松地域では、「やらまいか精神」=とにかくチャレンジしてみるという前向きな気質をもつ。多くの課題を抱える現状ではあるが、この「やらまいか精神」のもと乗り越えていくことは十分に可能であると信じている。


≪ トップページへ戻る
≪ トピックスメニューへ戻る