社長のコラム

第21回

「ISOの悲劇:経営システムを軽視したISOマネジメントシステムの構築」

(2002年11月)

 多くの企業でISOがうまく機能していない理由はどこにあるのかと考えますと、最大の原因は、経営システムを軽視してISOが一人歩きしているような気がします。その結果、経営のシステムとISOのシステムが分離して、ISOはISOのためだけに機能することになります。

 本来、ISOはマネジメントシステムですので、ほぼ同一に運用されることが望ましいのですが、実状は上記のような形で運用されているケースがほとんどです。このようなことが横行してしまう理由を掘り下げてみると、以下のようなことが言えるのではないかと思います。

@ 審査員
 ISO9000s審査員の出身は、品質管理や品質保証を行なっていた人が多いと推測されます。通常、品質管理や品質保証は、不良を流出しないように歯止めをかける役目ですので、会社の警察官のような存在です。その方々が審査するわけですので歯止めに関する要求が強い偏った見方をする人が多く、経営という全方位的な視点から審査できる人は少ないものです。

 そのような審査員はこのようなことを言っていました。「経営目標と品質目標は違うものですよ」、「売上・利益目標を全面に出すと今の社会情勢から嫌われますよ。顧客に良い品質を提供することによって自然と売上・利益がでてくるのですから」、「中期計画は毎年見直すものではおかしい」等、企業経営を知らないことが丸出しで、ISOが経営の上位概念になっているような指摘です。

 企業を経営したことがないのですから仕方ないのですが、その会社の考えや風土を感じて審査していただかないと混乱を招いたり、ムダな管理を増やしたり、何も経営に役立たない審査になってしまいます。ただ、中には本当に経営に役立つことを念頭においている審査員もいます。

 そのような方々(私が尊敬する3人の審査員)は視点が異なり、このようなことを言います。「ISO14000は、環境というと分かりにくい、結局コストダウンをすれば環境に良いし、利益の創出にも役立つ」、「品質マニュアルの版が異なっていたことは枝葉、それより当社では守秘義務管理を厳重にするルールが必要では」(人材派遣会社において)、「今回の指摘は、経営に役立つかどうかによって改善する、しないを決めて下さい。」(予備審査において)。このような方々に審査された企業は幸せです。

A コンサルタント
 ISOがブレークしてから俄かにコンサルタントを行なっている人がたくさんいます。経営の事はおろかISOについてもそれほど知識があるわけでもなく、単にISOが求めている手段を過剰に構築したがります。

 また、ISOは経営の基盤を強化すると宣伝していても、結局はISOを構築することで基盤の強化につながると述べているだけに留まります。顧客から見た問題を改善したり、社内の問題を改善したりしてISOを構築していことするコンサルタントは少ないものです。

 なぜかというと、2つ理由があります。一つ目は、経営を知らないことです。経営は、顧客の要求を満たすことによって成り立ちます。このことを忘れて組織論を持ち出しても何の意味がありません。

 二つ目は、問題に踏み込みたくないからです。問題に踏み込んだ場合、解決する術を知らないか、ISOを構築するためにそのような時間がないかだと思われます。いずれにしても経営を知っているのかどうかが選定の重要要件になると思います。

B 企業
 いくら外部の機関に審査を依頼すると言っても、ISO事態は経営のシステムの下位システムにあたる訳です。せっかく今までやってきた良いシステムがあるのにISOではこのように要求されているからと変えてしまっては何のためにISOをやっているのか分かりません。

 自社の良い点は、なるべく変更することなく、足りない部分をISOで補完して行くということが大切です。そのためには、自社の良い点と改善すべき点を把握すること、ISOの進めていく時(審査においても)にコンサルタントや審査員に自信を持って理解させるという心がまえを持つ事が必要だと思います。

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