私は20年間にわたって百貨店で働いた経験を生かして、現在は医療人や福祉関係者の方々の接遇教育に携わっています。10年ほど前までは、研修にうかがっても、デパートと病院は違うとか、サービス業と医療はちがうのだからという考え方も根強くあり、拒否反応を示す人もいました。しかし、いまでは「医療はサービス業」ということに異論を唱える人はほとんどいなくなりました。むしろ積極的にビジネスの手法を取り入れるようになってきました。医療機関が「顧客満足」というビジネスの概念を「患者満足」ということばに変えて取り組み始めたことなどは、そのひとつの現れです。
さて、患者満足度を上げるための要素としては、医療そのものの質だけでなく、情報や環境などの項目があるが、接遇はそれらに並ぶものです。例えば、患者が設備の整ったところで適切な治療を受けたとしても、病院職員から乱暴な言葉や態度で応対されたら、決して患者は満足せず、自分にとってより好ましい、ほかの医療機関を求めて去っていくでしょう。このように、接遇は本来の医療サービスという本来の商品の質に影響を与えるばかりでなく、結果的に経営の面にも関係してくることになるのです
では、接遇という患者応対はなにで構成されているかというと、それは「スキル」と「マインド」です。ここでいうスキルとは、マインドを表現するための言葉や態度であり、すべての医療従事者の仕事は、これらのコミュニケーションスキルを通して実行されます。心のこもった語りかけや動きによって、患者は励まされたりするのです。いい換えれば、病医院でのもうひとつの処方なのです。
患者満足とは、従来の病院中心志向から患者中心志向へ転換することで成立します。そのためには、患者の視点で物事を考えることが重要です。患者の肉体的、精神的な痛み、つらさ、苦しみ、悩みや恐れをわかろうと努力し、よりよい方向へと患者とともに歩んでいこうとする心が必要です。「患者さまはお客さま」という意識と、美しく合理的で理にかなった表現技術とが一体となって、接遇は向上していくのです。
今後、医療の世界はますますハイテクを駆使したものになっていくでしょう。しかし、だからこそ「人対人のサービス」であるハイタッチな「患者応対」というものが求められるのではないでしょうか。そういう意味でも接遇応対指導は重要視されていくと思います。
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